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さて、センターステージの続編(?)の感想ですが…
うーん、何だか一昔前の香りがするようなドラマでございました。 イーサンが出てなかったら見なくてよかったな、といったところ。テレビで映画を放送するときに出てくる、オリジナルバージョンから修正されてます、とのテロップが出ていたから、映画として撮ったものの配給会社が買ってくれなかったってことでしょうか。 バレエを見慣れている人にとって見ごたえのあるシーンは、イーサンがお手本で踊るソロくらいかな。。。練習着で丁寧に踊っていて足先が綺麗です~。でもヒップホップっぽく踊るところはイマイチ乗りきれてなかったような。回転する時顔が綺麗に付きすぎ。。。 ヒロインはグラビアに載っていそうなグラマー系の女の子でイマイチ好感が持てなかったし、ろくにバレエのレッスンを受けたことはないけれど才能と情熱はあるという設定で、見る側からすればバレエよりヒップホップを踊っている場面の方が様になっていました。ちなみにバレエはテレビ映像を見て練習したという彼女のお手本映像はジリアン・マーフィー。ま、数年前の映画ではフォーカスは3人の女の子だったところ、今回は男の子にも焦点が当たっていたのは面白かったです。
在米の皆様、イーサン・スティーフェル出演、映画「センターステージ」の続編「Center Stage: Turn It Up」は今週の土曜、11月1日午後8時からケーブル局のOxygenで放送予定です。(その後何度か再放送あり。DVDは1月発売予定。)
今度のは映画というよりいわゆる2時間枠のスペシャルドラマですが、今年はABTの秋シーズンには参加していないイーサンの姿を拝めるチャンスです。 NYの秋のバレエシーンも、Morphoses、SFバレエ、ABTときてそろそろ大詰めを迎えております~。 9/10/2008 Teatro Real, Madid, SpainABTで名を馳せたアンヘル・コレーラが、母国スペインにクラシックの全幕物を上演するバレエカンパニーを創ろうと紆余曲折の末設立にこぎつけたコレーラ・バレエ。全幕作品の初公演となる、マドリッドのテアトロ・レアル(王立劇場)でのお披露目公演千秋楽を見てきました。 無料のプログラムはプレイビルみたいなぺらぺらではなく、良質の紙が使われていてちょっと大きめ、見開きの舞台写真なども入った立派なものでした。→ Solor: Angel Corella Nikiya: Kazuko Omori Gamzatti: Adiarys Almeida Bronze Idol: Kirill Radev High Brahmin: Yerlan Andagulov 何度もABTで見ているマカロワ版のラ・バヤデールだが、衣装やセットは少々違った。舞台はいつも見ているMetより小さく、やや親近感のある「バヤ」である。アンヘルの新カンパニー、いったいどんなバレエ団なのだろうかと興味津々だったが、一言でいえば、世界に名だたるカンパニーのレベルにはまだまだ程遠い。だが、新カンパニーの為に集められた人材がどこまで出来るか、という目で見れば上出来である。旗揚げ公演を成功させるという一つの目標に向かって団員が皆で努力してきたからか、その空気の中にアットホームな暖かさがあり、客席も、バレエを見慣れた客層ではなかったと思われるが終始応援体制で、とても雰囲気の良い公演だった。影の王国のコールドの中には見ていられないほどふらふらしている人もいたが、それを暖かく見守ってあげたくなるような気持ちにさせられる。アラは多いがそれを覆い隠す明るさのあるカンパニー、といったところだろうか。 コレーラは、春から体のあちこちを痛めていたようだったが、しっかり踊りはしていたものの、本調子ではなかったように思う。とても焦燥感の強いソロルであったが、思いやりに欠ける自己完結型の男であったな。。。私の好きなニキヤは細長い線の大人の女性なので、小柄な大森さんはちょっとイメージとは違ったのだが、彼女は女性の多面性を表現するダンサーである。最初のシーンはどちらかというと可愛い雰囲気が強かったのだが、ソロルとのPDDでは妖艶なこと。そして終幕では決して折れない強さをもった女性。これからもっといろんな役で見てみたい。ガムザッティを踊ったアルメイダは私の好きなタイプのバレリーナではなく、回転系の得意な元気なダンサーだが古典の動きの美しさを感じることが出来なかった。 たまたまマドリッドに行くことになったために見ることが出来た公演だったが、コレーラ・バレエの旗揚げを目にすることが出来たのは非常にラッキーだった。これから長きに渡って国内の観客数を増やし上手く運営していくことができるかどうか、カンパニーの今後の活躍に期待したい。
8月の半ばから親戚付き合いや旅行が満載で、かなりあたふたした日々を送っておりましたが、やっと普通の生活に戻りました。ヨーロッパから帰ったらすぐに日本から母が遊びに来て、先週はバーモント州に紅葉見物なぞに出かけたり。気が付いたらもう10月ですね。毎年、秋になると年末まで早いです。10月はバレエ月間(というのは私個人の理由だけど)、街はハロウィーン色になり、それが終わると11月にはサンクスギビング、そうするともうホリデーシーズン→クリスマスで慌しく。
さて、前回書いたヨーロッパ旅行ですが、マドリッドに3日ほど滞在した後、オーストリアに飛び(スーツケースはマドリッドに置き去りにされ)、スロヴェニア、クロアチアとドライブしました。クロアチアは最近とっても人気があるようですが、アドリア海は抜けるように美しく、古代ローマの遺跡なども沢山あり、なかなか良いところでした。 スペイン到着日にはコレーラ・バレエの公演を見に行きましたが、感想は後ほど。マドリッドの王立劇場、テアトロ・レアルは、クラシックな雰囲気とモダンな内装が上手い具合にミックスされた劇場でした。実は最初、入り口が分からずあたふたしたのですが、地下鉄の駅を出ると劇場前の広場で、その雰囲気からそれが正面かと思いきや、じつは裏だったわけで。王立劇場なのだから王宮に面していて当然なのですが、最初、そっちが正面だと分からなかったのですよね。。。インターネットで購入したチケットは、入り口を入ったところに何台かある機械にクレジットカードを通すとものの2、3秒で発券されるという優れたシステム。もちろん、チケット購入に使用したクレジットカードを持っていかないといけないわけですが、ボックスオフィスに並んでチケット引き換え、という手間が省けてとても便利です。客席は適度な傾斜で見やすい劇場なのではないでしょうか。前列は足が切れますが。天井桟敷には四方にスクリーンがあり、死角になる部分などもそのスクリーンで見ることが出来るようになっているようでした。 ![]() こちらはマドリッド自治政府庁。アンヘルやタマラの垂幕が。ガラ公演でもあったんでしょうかね。
このブログ、またしても2ヶ月も放っておいてしまいましたが、気がついたらマルチポストで大変なことになってました。。。この夏は身辺が慌しく、ブログを書く気になれなかったのですが、もうそろそろ秋のシーズンですね。NYもサンフサンシスコバレエにMorphoses、ABTと公演が目白押しですが、もしかしたら引っ越すかも、という話が持ち上がっていたので私はまだチケットを入手しておりませぬ。どうやら年内の引越しはなくなりそうな様子ですが。。。まったく落ち着かないったら。
ともあれ、今日から遅めの夏休み。ちょうどバケーションを計画していた時期にマドリッドで相方の仕事が入り、スペインに寄って行くことになったので、ぎりぎり、テアトロ・レアルでのコレーラバレエ旗揚公演最終日を見てきます。寝不足&時差ぼけの状態で行くのは確実なので、少々危険ではありますが。。。その後はオーストリア、クロアチアと周る予定です。 ![]() この夏はじめて自由の女神のいるリバティーアイランドに行きました。…というわけで後姿。
春~初夏のバレエシーズンも大詰めとなり、私のレポも息切れしておりますが、7月4日の独立記念日が上手い具合に金曜日で連休となった先週末は、都会を脱出してアリゾナ南部の大自然を楽しんできました。何でこの暑い時期に更にくそ暑いアリゾナなんかに行くことになったかというと、マイルでチケットが取れたという単純な理由からなのですが。アメリカ広し。
![]() ではでは、その前週のバヤデールの感想もそろそろ書きますので。。。 もっと写真を見る?
6/20/2008 Metropolitan Opera House
去年、もうお腹一杯だと感じたABTの新版「眠り」ですが、また行ってしまいました。イリーナ&マックスは素敵だったし、疑問が多々あった演出もあちこちで改められていて、それなりに楽しかったです。 この日の公演ではありませんが、NY Timesにスライドショーが出ています。 Choreography: Marius Petipa, additional choreography & staging by Kevin McKenzie, Gelsey Kirkland, and Michael Chernov Music: Peter Ilyitch Tchaikovsky Princess Aurora: Irina Dvorovenko Prince Désiré: Maxim Beloserkovsky The Lilcac Fairy: Veronika Part The Fairy Carabosse: Martine van Hamel The Fairy of Sincerity: Melanie Hamrick The Fairy of Fervor: Yuriko Kajiya The Fairy of Charity: Melissa Thomas The Fairy of Joy: Zhong-Jing Fang The Fairy of Valor: Kristi Boone Princess Florine & the Bluebird: Maria Riccetto, Blaine Hoven 去年この作品の初演にはオーロラに抜擢されたパルトだが、今年はオーロラの役は与えられずリラの精のみ。このあたりに彼女への評価の下がり具合が見とれる。しかし、踊り方からいえば、パルトに合うのはオーロラではなくリラの精だろうというのが正直なところ。(私は去年なぜ初演のオーロラがパルトだったのか分からなかった。)彼女のリラの精は威厳があり女性らしく、踊り方も丁寧で、私好みの演技だった。他の妖精達と並んで踊ると、その貫禄の違いが一目で分かる。それに、あまり足の大技がなくポールドブラやマイムが中心となる役は彼女の良さを引き出していたと思う。「この姫がどんどん大きくなって美しく成長した暁には指を刺して死ぬだろう」と言うカラボスに対し、前半は同じマイムで後半は「死ぬのではなく眠るだけ。王子様がやって来て、彼の口付けによって目覚めるでしょう」と言う部分は、とても優しげで、周りの人々を安心させるに足る、説得力のあるマイムだった。カラボスを演じたのはヴァン・ハメルだったが、あの玉虫色の変な衣装を着せておくのが可哀想なほど優雅なたたずまいだった。この版のカラボスは虫のボスみたいな魔女なのだが、何でこんなことになったのか、趣味の悪さには辟易である。一応クラシックバレエなんだから、火の玉に乗って現れ(赤い流れ星みたいなのが飛んできてボンっ煙が出るとカラボスとその一味が現れる)、火の玉に乗って去っていくという演出はいくらなんでもやりすぎかと。 さて、イリーナのオーロラ姫であるが、登場時のヴァリエーションは素晴らしい音楽感覚で美しくステップをこなし、特に、足を前後に広げる小さなジャンプ(←パの名前が分からない)は、滞空時間が長いわけではないのにそこだけ切り取って写真になったような華やいだ瞬間だった。ローズアダージオは、イリーナにしてはバランスが上手く取れなかったように見えた。手を繋ぐ王子達との息が合わなかったのかもしれないが、一人目とは一旦離しかけた手をもう一度繋ぎ直してバランスを取り直したり。それが彼女の演技に悪影響だったとは見えなかったが。全体的には正統派クラシックかつ華やかなイリーナのオーロラはとても美しかったのだが、顔の表情が豊か過ぎたのが難点といえば難点。特に口の動きがとても活発で、ニコッと笑ったり口を大きく開けたり閉じたり、何か喋っているように見えてしまって気になって仕方が無かった。 マックス王子も正統派ダンスノーブル。凛々しく美しく、見ていて安心できる。この版の演出では、リラの精と共にオーロラの眠る城に向かったデジレはカラボスの魔法による蜘蛛の巣に捕まってしまい、リラの精に助けてもらって事無きを得るのだが、それはちょっと情けない。最後、2人のグランPDDは、イリーナの情感豊かな演技にこの有名なPDDの新たな一面を発見した気分。これまでこのPDDの女性のヴァリエーションが面白いと思ったことはなかったのだが、イリーナの腕の動きは本当に情緒豊かで引き込まれるものがあった。 最後の結婚式の場面、去年の初演当時はオーロラの両親は死んじゃったことになっていたのだが、それがいたく不評だったらしく(私も王と王妃がいなくてとても寂しいと思った)、両親はじめお城の人々は死に絶えるのではなくオーロラと一緒に眠りにつくことになっていた。しかし、時代が中世からルイ16世時代に変わっていて参列者の衣装の雰囲気は前半からがらりと変わっているのに王と王妃だけ最初から着替えていないというのがとっても変だった。衣装といえば、1幕の求婚者達も、去年はド派手だったのが今年は落ち着いたものに変わってしまっていて、誰がどこの国の人だか分からなくなっていたのが不満だった。
今日はイリーナ&マキシムの「眠り」を見てきました。今年は「眠り」を見るつもりではなかったのですが、先週のDonQに一緒に行く予定だった知人が行けなくなってチケットが一枚浮いちゃったので、「眠り」も一応見とくかということに。(そして、その私が交換に出した席は偶然にも翌日いちぞーさんが入手されてたんですが(笑)。) で、今晩帰宅してから感想を書き留めておこうと思ってメモ用のドキュメントを開いたら、書きかけのまま放ってあった去年の「眠り」のレポ発見。そういや、これを終わらせなかったところから、去年は半年ほど舞台記録を放棄したんだった。。。
読んでみたら、ほほう、こんなことを思ってたのね、と我ながら新鮮だったので、今更ですがアップします。尻切れとんぼのままですが。 今日の分の感想はまた後ほど… ***************************** 6/9/2007 Metropolitan Opera House ABTの新版「眠り」の最終公演、キャスト変更の嵐でした。まず、主役が最初の予定ではヴィシニョーワXマラーホフだっ たところ、少し前にマラーホフの怪我によりホールバーグに変更、そして今日行ってみたら、プログラムに挟まった紙切れにはヴィシニョーワは「病気」なので 主役はヘレーラXコレーラとのこと。その他、青い鳥のPDDがレイエスXコルネホ→レーンXロペスというのをはじめ、脇役変更リストが5行ほども。それで もゲルシー・カークランドのカラボスに変更はなかったのでホッとしていたら、2幕目の始まる前にアナウンスがあり、ゲルシーは怪我をしちゃったので2幕目 は代役が出ますとのこと。確か、カラボスがボンッという爆発と共に姿を消すところで痛そうに手を押さえていたように見えたので、そこで怪我をしちゃったの かもしれません。 作品はというと、元々私はそんなに「眠り」は好きではないんですが、まあそれなりに楽しかったです。衣装やセットが面白いし。ただ、一回見たらもういいかも…、というプロダクションではあります。 Choreography after Marius Petipa Additional choreography and staging by Kevin McKenzie, Gelsey Kirkland and Michael Chernov Music by Peter Ilyich Tchaikovsky Princess Aurora: Paloma Herrera Prince Désiré: Angel Corella The Lilac Fairy : Stella Abrera The Fairy Carabosse : Gelsey Kirkland, Kristi Boone King Florestan: Victor Barbee His Queen: Susan Jaffe The Bluebird & Princess Florine: Carlos Lopez, Sarah Lane ゲルシー・カークランドがABTに戻って制作に参加した、今回の新版「眠りの森の美女」、プティパ&チャイコフスキーのグランドバレエがショーに成り変わってしまったという意味において、残念ながら駄作と言わざるを得ない。元々おとぎ話でドラマ的要素の少ない作品であるだけに、現代人を飽きさせないプロダクションにする為にそれなりの工夫が必要なのは理解できるが、それが特殊効果であったり陳腐な小芝居であったり、また、変更を加えられた振付に面白みが無ければ、ただ目新しいだけでもう一度見たいとは思えない作品になってしまう。クラシックのカンパニーではないNYCBのプロダクションの方がかなり正統派に思えてしまうほどだった。 セットは全体的にディズニーランド的ファンタジーの世界の雰囲気。プロローグの宮廷場面はブルー系でまとめられており、その後、デジレが登場する森のシーンの赤と上手く対比されている。衣装は全体的に私の趣味ではなかったが、特にカラボスとその一味の玉虫色はセンスが悪かったと思う。ただ、前半が中世なのに対し、オーロラが目覚める時代のイメージががルイ16世時代ということで、百年の眠りどころか五百年か七百年くらい眠っていたようだが、衣装の感じががらりと変わるので目新しくて面白かった。 しかし、カラボスが火の玉になって飛んで行ったり、デジレが蜘蛛の巣に貼り付けになったりという変な演出は要らないだろう。そして、王と王妃は眠りにつかなかったということで、3幕の結婚式シーンがどうも寂しく、また、こういった場面にはよく配置されている周囲のエキストラもいなかったため、華やかさとして物足りないシーンになってしまっていた。 と、かなり厳しい意見を述べてしまったが、ダンサー達は頑張っていた。特に、普段あまり好きでないヘレーラの演技を見て良かったと思ったのは何年かぶりだ。私は彼女の踊り方はあまり好きではなく、シェネの時の手の置き方が気に食わないとか細かい注文もいろいろあるのだが、特に1幕目のオーロラとして溌剌と元気で純粋な彼女の演技は今回はとても良かった。ローズ・アダージオも、終始笑顔を絶やさず、腕はゆったりとアン・オーに上げるし、次の相手が来る度に、前の相手の方に振り返ってニコッ、客席にもニコッという余裕。2幕のしっとりとしたシーンではつまらなかったのだが、3幕のグランPDDもなかなか良かった。 アンヘル王子は、登場時がめちゃくちゃ格好いい。とてもきりりとした凛々しい王子だった。もっと良い振付にしてくれていたらもっと見栄えもしただろうに。今回意図せずしてコレーラのデジレを見ることになったが、グランPDDでも丁寧にかつダイナミックに、さすがスターというところを見せてくれた。 リラの精のアブレラは、少し前までは柔らかな表現が苦手なダンサーだと思っていたのだが、このところの成長著しく、とても優雅な良い踊りを見せてくれた。存在感のあるマイムもなかなかのもので、迫力あるカークランドにひけをとらないほどだった。 (未完)
6/14/2008 Metropolitan Opera House
一言で言うなら幸せになるドン・キホーテ。共演者に敬意を払い、観客を楽しませることに徹する、ニーナとアンヘルの素晴らしい舞台でした。ニーナは来年のMetシーズンをもってABTから引退するとのことですが、もしかしたらニーナのキトリもこれが見納めだったのかもしれません。 Choreography: Marius Petipa and Alexander Gorsky Music: Ludwig Minkus Kitri: Nina Ananiashvili Basilio: Angel Corella Don Quixote: Victor Barbee Sancho Panza: Alejandro Piris-Niño Gamache: Craig Salstein Mercedes : Kristi Boone Espada : Sascha Radetsky Flower Girls: Renata Pavam, Isabella Boylston Gypsy Couple: Simone Messmer, Joseph Phillips Queen of the Dryads: Veronika Part Amour: Sarah Lane このシーズンが始まってから、ニーナの体力・技術力の衰えを指摘するレビューをあちこちで目にしていたので、激しい踊りが多く最後にグランPDDの来るDonQは、実は少し心配だった。春先にグルジアバレエの公演で見たときには去年よりもすっきりとした体形で軽そうに踊っていたが、全幕物となれば持久力勝負である。だが1幕目、溌剌と登場のニーナを目にしたとたん、そんな私の心配はどこかへ飛んでいった。最後のバリエーションでの連続回転にそれほどスピード感はなかったが、それ以外は余裕をもった思い切りのよい演技。華やかで気が強そうでありながら優しさの漂うニーナのキトリはやはり絶品である。 アンヘルははじめから全力投球。最初から最後まで120%力を出す踊り方である。踊っている本人が役を心から楽しみ、観客のリアクションを糧に、もっともっとと酔いしれているようだ。一つ一つのポーズを決めるたびに爽快感溢れる表情!見ているこちらもその真っ直ぐな心意気がとても快感である。 脇を固めるキャストもなかなかで、クリスティ・ブーンはとてもセクシーなメルセデス、ラデツキーのエスパーダはもうちょっとマントさばきを頑張って欲しいところだが決めるところはしっかり決める切れのよい踊り。(←ゴメスで見たかったというのが本音だけどね。)嬉しい発見だったのが、ジプシーのジョセフ・フィリップス。ABTには今年入ったばかりだが、迫力あるテクニシャンである。今後が楽しみ。キューピッドのサラ・レーンはこういった役はお手の物。ちょっとひらひらしすぎに見えるところもあったが、キュートで元気のよい彼女はキューピッドそのもの。森の女王パルトは貫禄ある踊り。だが、バリエーションの途中で気が抜けたようにステップがいい加減に見えた部分があったのが残念。私は彼女の欠点は踊りにムラがあることだと思っているが、今回もそれが垣間見えた感じ。 そして最後、結婚式のグランPDD。最初のアダージオで今回ほど感動したことはなかった。キトリとバジルの2人の気持ちの盛り上がりが伝わってくるように、何だかじーんと胸が熱くなってしまったのだ。上演前には大丈夫かなと思っていたフェッテだが、登場したニーナの表情には強烈な集中力がにじみ出ている。最初は両手を腰にあてたまま、足の力だけで昔を髣髴とさせる高速回転。その後、片手をつけ、もう一方の手はチュチュの先を摘んで可愛いポーズを取りながら回り、最後の数小節は両手をつけてもかなり減速してしまっていたが、ここまで魅せてくれるとはあっぱれである。そしてその流れを引き継ぐアンヘルの見事なピルエットの後、フィニッシュはニーナが後ろにジャンプして後方フィッシュダイブ!盛り上がりの頂点だった。 終演後、カーテンコールではニーナは共演者一人一人に花束から一輪ずつ抜いたバラを手渡し、何度も続くアンコールで姿を現しては舞台の右側と左側両方で観客の声援に応える。そんな気遣いも彼女が素晴らしいバレリーナたる所以なのよね。
6/14/2008 NY State Theater
4演目中2つは好きでないことは分かっていながらこの公演を見ることにしたのは、勿論、パリからのゲスト出演のニコラが踊るから。オペラ座のダンサーを見る機会自体とっても少ないNYで、こんな形でゲスト出演させてくれるとは、NYCBもたまには洒落たことしてくれるじゃないの。 NY Timesのレビューはこちら。 2 & 3 PART INVENTIONS Music: Johann Sebastian Bach Students from the School of American Ballet 前回この作品を見たときには本カンパニーのダンサー達が踊っていたが、今回はロビンス・フェスティバルの一環として、元々の意図通りSABの生徒達による演技。まだ15歳前後かと思われるが、彼らの踊り方は紛れも無くNYCBのそれである。すぐにもプロになれそうな力量の男の子もいたが、発表会じゃないんだから全編見せなくてもいいんじゃないかと。(←つまり長かった。) A SUITE OF DANCES Music: Johann Sebastian Bach Nicolas Le Riche 幕が上がるとチェリストと向かい合って床にくつろぐニコラ。本当に来てくれたんだ!チェリストと目と目で確認し合ってからゆっくりと位置につき、ゆらりと動き出す。ダミアン・ウォツェルがこれを踊ったときにも感じたことだが、この作品の良さは、音楽に合わせて自由に自然に踊っているように見せるところにあると思う。ニコラも、最初はだらんとして見えるほどに肩の力を抜いて体を動かしはじめ、振付を踊るというよりは自分の感じるままに動いているよう。軽くステップをふむ足先は床に吸い付くように柔らかで、飛び跳ねると美しくカーブを描くつま先にうっとり。音楽になったニコラはフォルテシモをピルエットの勢いで表現し、足を踏み鳴らしたり、時にはやんちゃな少年のように飛びまわったり。リラックスした表情で心から楽しそうに踊るニコラを見ていると、胸が温かくなり、ほんわかとした幸せを感じられた。 IN MEMORY OF... Music: Alban Berg Wendy Whelan, Charles Askegard, Jared Angle この作品は以前見たときに苦手だと感じたが、やっぱり苦手だった。少女の死を描いた悲しく美しいお話なのだが、全般にわたって暗い音楽が、私の眠りを誘うわけで。。。 GLASS PIECES Music: Philip Glass Rebecca Krohn, Tyler Angle, Rachel Rutherford, Jason Fowler, Savannah Lowery, Ask La Cour, Wendy Whelan, Sébastien Marcovici フィリップ・グラスの音楽の反復性を上手く使った作品。舞台上をダンサー達がただばらばらと歩いているだけのように見えるがそれが何度も繰り返されるとデジャヴのよう。突然ストンと幕が下りて1部目のRubricが終わると、第2部のFacadesはウェーランとマルコヴィチが美しいPDDを踊る後方で、一列になった女性達がシンプルな動作で右から左へとゆっくりと移動していく。どうしてもその後方の、ほぼシルエットにしか見えない人々に視線が引き寄せられてしまうのが不思議なところ。3歩進んで2歩下がるような単純な動きなのに見ていて面白いのだ。最後のAkhnatenは、男性グループのエネルギッシュな動きが印象的で、ウェストサイドストーリーの振付ともつながりがあるような感じだが、後半ちょっと眠くなってしまった。
6/13/2008 NY State Theater
18日の引退公演には行けないのでダミアン・ウォツェルを見るのはこれが最後。しんみり心に残る放蕩息子でした。 Thou Swell Music: Richard Rodgers Choreography: Peter Martins Faye Arthurs, Charles Askegard, Yvonne Borree, Nilas Martins, Sara Mearns, Jared Angle, Rebecca Krohn, Tyler Angle 2003年、リチャード・ロジャース(「サウンドオブミュージック」「王様と私」等の作曲家)の生誕100年を記念してピーター・マーティンスが振付た作品。舞台上のバンドと、20世紀前半のロジャース作品を次々に歌う男女の歌手、タキシードにイブニングドレス姿の4組のカップルが1930年代のNYのナイトクラブをエレガントに演出する。私はこういった演目はバレエ作品としてあまり好きではないが、マーティンスの振付にしては洒落ていてそれなりに面白かった。バレリーナはロングドレスを着せると本当にスタイルが良いもので。私の隣に座っていた老夫婦は時々笑い声をあげるほど、本当に楽しそうだったので、セッティングからしてこういった年代の方々向け、といった印象だった。 Prodigal Son Music: Sergei Prokofiev Choreography: George Balanchine The Prodigal Son: Damian Woetzel The Siren: Maria Kowroski 我まま息子として登場のダミアンが膝をばしばしと叩き、飛び回って叫ぶ様は、外に出たくて仕方の無いフラストレーションが良く表現された、エネルギーの有り余った聞かん坊。それが、その後身ぐるみ剥がされ一人になったときには息をするのも辛いほどの孤独感と痛々しさがひしひしと伝わってくると同時に、その飾りの無い姿が美しい。こういった内面表現を知的に演じるダミアンが舞台を去ってしまうなんて、本当に寂しい。 この日ではないけれどNY Timesに出ていた同プログラム評はこちら。 Brahms-Schoenberg Quartet Music: Johannes Brahms, orchestration by Arnold Schoenberg Choreography: George Balanchine Abi Stafford, Philip Neal, Savannah Lowery, Janie Taylor, Jared Angle, Megan Fairchild, Andrew Veyette, Wendy Whelan, Charles Askegard 4曲からなるこの作品は、少しずつ違った雰囲気で振付られていて、衣装・セッティングも微妙に変化する。アレグロを踊ったスタフォードは軽く柔らかで、インターメッツォのテイラーは妖艶。アンダンテにフェアチャイルドは合わないように思えたが、まるで彼女の脚が指揮棒になったようにテンポをきざむ、その音楽性は見事。4曲目は民族調で勢いのある艶やかな作品で、ウェーランがとても華やか。
6/7/2008 Metropolitan Opera House
好不評入り乱れるトワイラ・サープの新作「Rabbit and Rogue」ですが、私は…星3つ、「まあまあ」といったところかな。。。 Etudes Choreography: Harald Lander Music: Knudaage Riisager (after Carl Czerny) Xiomara Reyes, Sascha Radetsky, Mikhail Ilyin バーレッスン部分はかなり揃わず、ABTのへなちょこオケもあの音楽、特に前半の速いメロディーや不協和音部分を上手く弾きこなせないという予想どおりの出来だったが、なかなか楽しめた。大体、ABTのコールドがぴったり揃った演技をしてくれるなどとは期待していなかったが、奥でグラン・バットマンを繰り返していた3人、てんでバラバラである。うちの相方など、「え、あれってわざと揃わせてないんじゃないの?」という爆笑コメント。ま、これもABTの愛嬌ということで。でも後半、複雑なステップになってくると皆なかなか気合の入った演技をしてくれた。 レイエスは、全般に渡って好感度の高いしっかりとした演技を披露。観客を楽しませようとする意気込みがよく分かる。フェッテのコンビネーションで少し軸がぶれて動いてしまった他は、技術的にも安定していた。ラデツキーもイリインもかなり頑張っていて、お互い負けじと力強いジャンプを繰り広げる。イリインは、今年コールドに入団したばかりだが、ワガノワで学び、マイアミではプリンシパルだったという、ピルエットもジャンプも綺麗にこなす実力者。見た目は少しコボーに似てるかな。序盤、ピルエットの止めの上手さには目を見はった。回転の終わりのほうで速度を落とし、パッセのまま綺麗に正面を向いて止まったり、ゆるりと余裕を持って4番ポジションに入ったり。後半になってもダイナミックなジャンプを決めてくれ、さすがについこの間、サラファーノフの8回連続間髪入れないダブル・トゥールザンレールなどというわけの分からない技を見ちゃったので物足りなく感じなかったといえば嘘になるが、非常に良い演技だった。これから期待の人材である。 Rabbit and Rogue Choreography: Twyla Tharp Music: Danny Elfman Rogue: Ethan Stiefel Rabbit: Herman Cornejo Rag Couple: Gillian Murphy, David Hallberg Gamelan Couple: Paloma Herrera, Gennadi Saveliev Quartet: Yuriko Kajiya, Maria Ricceto, Carlos Lopez, Craig Salstein Ballet Talkのレビューを見ていたら、「Push comes to shove in the upper room」という表現をしている人がいたが(Push Comes to ShoveもIn the Upper Roomもトワイラ・サーープの80年代の代表作)、なるほど、そんな感じの作品である。目新しさは特に無く、どこかで見たことのあるサープ作品をつぎはぎにしたような。特に4楽章目のGemelanのパートは音楽もIn the Upper Roomに使われているグラスの曲にちょっと似ていて、衣装が違うだけのような印象を受けた。そしてそのノーマ・カマリの衣装も何だかオールドファッション。 ただ、だからといって面白くなかったわけではない。私はイーサンファンなので、まず、脚の具合のずっと悪かったイーサンが、あれだけ体全体を自由に使って楽しそうに動き回る姿を見るのがとても嬉しい。コルネホとの掛け合いの部分は2人の表情も愉快で、たとえ軽々と飛んで回っていても、それが彼らの技術力の賜物であることは良く分かる。もったいないと思ったのは、背景が真っ黒で、2人の衣装もシルバーのラインを除いて真っ黒なこと。銀色のラインが残像効果を生む良さはあるが、せっかくの綺麗な動きが背景に溶け込んでしまっている。もうちょっと違ったトーンの色を持ってきてくれれば良かったものを。。。 スティーフェル&コルネホの出ている場面はとぼけた2人がとても楽しいのだが、あとの2組、マーフィー&ホールバーグのRag Coupleとヘレーラ&サヴェリエフのGamelan Coupleは振付がつまらなくてちょっと眠くなってしまった。この2組よりも面白いと感じたのは、バックグラウンドでかなりフィジカルな動きを繰り広げる加治屋、リチェット、ロペス、サルステインのカルテット。加治屋さんはビキニ姿になると鋼のような筋肉美、とても力強く正確でシャープな動きを披露してくれた。余談ですが、コルネホからRを取ると、Conejoはスペイン語でウサギ(Rabbit)なんですよね。。。
6/6/2008 NY State Theater
ロビンス・フェスティバルのプレス発表時点ではOther Dances にはコジョカル&コボーのゲスト出演が予定されていたのですが、2週間前に正式キャストが発表になったら2人の名前は無し。代わりにABTからケントが出演ということになっていました。 全てショパンの音楽にロビンスの振付というプログラムながら、3つとも全く違った雰囲気の作品で、とても楽しめました。 DANCES AT A GATHERING Yvonne Borree, Ashley Bouder, Sara Mearns, Rachel Rutherford, Abi Stafford, Jared Angle, Antonio Carmera, Amar Ramasar, Jonathan Stafford, Damian Woetzel 色とりどりのパステルカラーの衣装をまとったダンサー達が、入れ代わり立ち代わりショパンのピアノ小品にあわせて踊る、とても音楽的な作品であるが、そこかしこにロビンスのユーモアと遊び心が散りばめられていて、ただ美しいだけのバレエではなく、観客の笑いを誘う楽しさもある作品。コールドは無しで、力量のあるソリスト、プリンシパルのみが踊っていたこともあるだろうが、NYCBの特徴が良く楽しめた。パッセやアチチュードに入るときの蹴り上げるような勢い、杭を差し込むような鋭いポワント使い、そしてただのスキップのようなステップにも駆け抜けるようなスピード感がある。 特筆すべきは勿論この18日に引退公演を予定しているダミアン・ウォツェル。以前にもロビンス作品を踊るダミアンを見て感じたことだが、この人は、まるで決まった振付を踊っていることを感じさせないような自然さで、音楽に合わせて思うがままに体を動かしているように踊る。誰もが言うところだが、タフな振付の部分でも全く力みを見る者に感じさせない。そして、もう今年引退してしまうとは思えないほどジャンプの切れ味は抜群、ステップはシャープで、回転すればまるで小さな竜巻が起こっているようだった。 何度も続いたカーテンコールの最後、ダミアンが一人で姿を現すと、一際大きな拍手と歓声が沸き起こる。皆、あとたった数回となったダミアンの舞台を見に来ているのよね。 OTHER DANCES Julie Kent, Gonzalo Garcia コジョカル&コボーが来ないと分かったときにはがっかりしたものの、ケント&ガルシアというちょっと面白い組み合わせに興味津々。昨年SFBからNYCBに移籍したガルシアは、1ヶ月ほど前に見たときに(←まだレポ書いてません…)、以前よりずっと上達していてあのウェンディ・ウェーランを食う存在感を発揮、力強さと甘さのバランスが私のツボで、久々にときめいちゃったのだが、ケントとは合わないんじゃないかと思っていた。ところがどっこい、手をつないで歩く2人の視線が熱く絡み合う様はまるでラブラブ。ジュリーの控えめでソフトな踊り方はNYCBの舞台ではとても新鮮で、ガルシアは自分の踊るところは強さを出し、ジュリーをサポートする部分は優しく暖かいジェントルマン。見ていて心温まる演技だった。 (そしてガルシア君にかなりめろめろです。ダミアンが去る今、NYCBで私が見るべきはこの人だわ。。。) THE CONCERT (OR, THE PERILS OF EVERYBODY) Sterling Hyltin, Andrew Veyette, Gwyneth Muller Pianist: Nancy McDill 3作品目はドタバタ喜劇。最初に登場するピアニストからして可笑しい。遅れてきて物音を立てる人や席を間違える人、変な女の子など、コンサートに来るいろんな人々を描いた導入部は序の口、次第に脈絡の無いコメディーワールドに突入する。いつもは清楚な雰囲気のスターリン・ヒルティンのコメディエンヌぶりも見事。
5/31/2008 Metropolitan Opera House
昨年一昨年と、スケジュールが上手く合わなかったこともあり、ABTの白鳥は3年ぶり。そしてジリアンの白鳥は4年ぶり。私は彼女の白鳥はちょっと苦手ですが、今年はマリインスキーで腕の動きを特訓したとのことだし舞台でも高評価を得ているので、どれだけ変わったかと期待しましたが・・・。 Choreography: Kevin McKenzie after Marius Petipa & Lev Ivanov Music: Peter Ilyitch Tchaikovsky Odette-Odile: Gillian Murphy Prince Siegfried: Jose Manuel Carreño von Rothbart: Roman Zhubin, Sascha Radetsky Pas de Trois: Maria Ricceto, Yuriko Kajiya, Gennadi Saveliev 一幕、久々に見る華やかなパーティーシーンにわくわくする。カレーニョ王子はあまり若々しくはないが、端正な正統派王子。ウォルフガングで出演のフレデリック・フランクリンは今年もお元気そうで一安心。パ・ドゥ・トロワはリチェット、加治屋、サヴェリエフ。加治屋さんは、エリカ・コルネホがよく踊っていたジャンプの多い方の役だったが、彼女の可憐さとバネの強さを生かす役柄が良く似合っていて、私が今までに見た中で一番良い踊りだった。彼女にはこういった、明るい笑顔で溌剌と踊る役がとても似合う。そしてリチェットは、これまでは振付を正しく美しく踊る人、という印象だったが、今年はそれに彼女自身の持ち味をアピールする貫禄が加わって、すっかりベテランの域。サヴェリエフもいつもながらの安定した踊りを見せてくれて、とても完成度の高いパ・ドゥ・トロワだった。 オデット・ジリアンの登場シーンはその威厳ある美しさがとても印象的。彼女はここ数年でプリマとしての輝き、存在感を加速度的に伸長させたが、「何かとても美しいものが来た」という登場時点での印象付けにそれが凝縮されていたと思う。さて、元々スパッと切れ味の良い踊り方をするジリアンの白鳥は、前から気になっていた部分、アダージオに入る前にやけに拒絶的に王子を振り払うことや、ゆったりとした静のシーンに妙な勢いのキックが入っちゃうこと等にあまり改善が見られたようには思えなかった。そして、ちょっと前にキーロフ三昧したことも私の視点を辛口にしていると思うが、やはり白鳥としてはアームスと背中の使い方がマズい。特に、腕が肩より後ろにあるときに硬さが目立つし、体の前部にある腕をぶんっと後ろに持っていく回し方が美しくない。そして2幕の最期、白鳥が飛び立って行く時の羽使いはもうちょっと研究して欲しいところ。しかし、役作りでいうと、前回は王子なぞいなくたって自分で運命を切り開いて行きそうな白鳥だと感じたが、今年はとても女性らしく、グラマラスで情の深いオデットであった。切実な気持ちを表現するカレーニョのとの温度感もぴったり。 今年コールドからコンラッドに大抜擢されて話題のコリー・スターンズは、この日スペインの踊りに登場(1幕の農民ボーイズの中にもいたけど)。マッケンジー版のスペインはどうということのない振付なので踊り方の良し悪しはあまり分からなかったが、やや細身で背が高く手足も長いので、クラシックの主役に似合う体型ではあろう。笑顔になるとまだまだ少年ぽく可愛い。可愛いといえばそのスペインのお姫様だったサラ・レーン。ジークフリードが誰も選ばなかったところで、「何で私を選ばないの!?」と大ショックな演技がものすごく愛らしかった。紫のロットバルト(人間の姿のロットバルト)はラデツキーだったが、う~、この役はやっぱりゴメスでもう一度見たい。。。ラデツキーも頑張っていたが、邪気と色気と迫力が足りないのよ~。 そしてカレーニョとジリアンの華やかなグランPDD。ジリアンはヴァリエーションの出鼻、アチチュードに入る前のピルエットで既に「何回まわった?」という勢い。オデットに間違えるにはちょいと勢いと強さがあり過ぎたようにも思えるが、彼女ならではの迫力ある踊りである。フェッテは前半をシングル・シングル・トリプル、後半はダブルのときに白鳥らしく腕を大きくふわりと羽ばたかせるという高度なコンビネーションを見せてくれ、客席は大興奮。 マッケンジー版の4幕は、クライマックスなのに振付が面白くなくて、しかも何故2人で死ぬのかという表現に説得力を持たせるのが難しい場面。これまで同じプロダクションを何度も見てきたが、何故死ななければならないのかをはっきり分からせてくれたのはいまだかつてニーナとボッカのみ。というわけで、今回も表現力には限界があったが、カレーニョの方にはオデットの後を追って身投げすることへの意志の強さ、覚悟がしっかりと感じられたかな。
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