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- Etudes, Rabbit and Rogue - American Ballet Theatre
6/7/2008 Metropolitan Opera House

好不評入り乱れるトワイラ・サープの新作「Rabbit and Rogue」ですが、私は…星3つ、「まあまあ」といったところかな。。。

Etudes
Choreography: Harald Lander
Music: Knudaage Riisager (after Carl Czerny)

Xiomara Reyes, Sascha Radetsky, Mikhail Ilyin

バーレッスン部分はかなり揃わず、ABTのへなちょこオケもあの音楽、特に前半の速いメロディーや不協和音部分を上手く弾きこなせないという予想どおりの出来だったが、なかなか楽しめた。大体、ABTのコールドがぴったり揃った演技をしてくれるなどとは期待していなかったが、奥でグラン・バットマンを繰り返していた3人、てんでバラバラである。うちの相方など、「え、あれってわざと揃わせてないんじゃないの?」という爆笑コメント。ま、これもABTの愛嬌ということで。でも後半、複雑なステップになってくると皆なかなか気合の入った演技をしてくれた。

レイエスは、全般に渡って好感度の高いしっかりとした演技を披露。観客を楽しませようとする意気込みがよく分かる。フェッテのコンビネーションで少し軸がぶれて動いてしまった他は、技術的にも安定していた。ラデツキーもイリインもかなり頑張っていて、お互い負けじと力強いジャンプを繰り広げる。イリインは、今年コールドに入団したばかりだが、ワガノワで学び、マイアミではプリンシパルだったという、ピルエットもジャンプも綺麗にこなす実力者。見た目は少しコボーに似てるかな。序盤、ピルエットの止めの上手さには目を見はった。回転の終わりのほうで速度を落とし、パッセのまま綺麗に正面を向いて止まったり、ゆるりと余裕を持って4番ポジションに入ったり。後半になってもダイナミックなジャンプを決めてくれ、さすがについこの間、サラファーノフの8回連続間髪入れないダブル・トゥールザンレールなどというわけの分からない技を見ちゃったので物足りなく感じなかったといえば嘘になるが、非常に良い演技だった。これから期待の人材である。

Rabbit and Rogue
Choreography: Twyla Tharp
Music: Danny Elfman

Rogue: Ethan Stiefel
Rabbit: Herman Cornejo
Rag Couple: Gillian Murphy, David Hallberg
Gamelan Couple: Paloma Herrera, Gennadi Saveliev
Quartet: Yuriko Kajiya, Maria Ricceto, Carlos Lopez, Craig Salstein

Ballet Talkのレビューを見ていたら、「Push comes to shove in the upper room」という表現をしている人がいたが(Push Comes to ShoveもIn the Upper Roomもトワイラ・サーープの80年代の代表作)、なるほど、そんな感じの作品である。目新しさは特に無く、どこかで見たことのあるサープ作品をつぎはぎにしたような。特に4楽章目のGemelanのパートは音楽もIn the Upper Roomに使われているグラスの曲にちょっと似ていて、衣装が違うだけのような印象を受けた。そしてそのノーマ・カマリの衣装も何だかオールドファッション。

ただ、だからといって面白くなかったわけではない。私はイーサンファンなので、まず、脚の具合のずっと悪かったイーサンが、あれだけ体全体を自由に使って楽しそうに動き回る姿を見るのがとても嬉しい。コルネホとの掛け合いの部分は2人の表情も愉快で、たとえ軽々と飛んで回っていても、それが彼らの技術力の賜物であることは良く分かる。もったいないと思ったのは、背景が真っ黒で、2人の衣装もシルバーのラインを除いて真っ黒なこと。銀色のラインが残像効果を生む良さはあるが、せっかくの綺麗な動きが背景に溶け込んでしまっている。もうちょっと違ったトーンの色を持ってきてくれれば良かったものを。。。

- Etudes, Rabbit and Rogue -  American Ballet Theatre_d0064711_16402389.jpgスティーフェル&コルネホの出ている場面はとぼけた2人がとても楽しいのだが、あとの2組、マーフィー&ホールバーグのRag Coupleとヘレーラ&サヴェリエフのGamelan Coupleは振付がつまらなくてちょっと眠くなってしまった。この2組よりも面白いと感じたのは、バックグラウンドでかなりフィジカルな動きを繰り広げる加治屋、リチェット、ロペス、サルステインのカルテット。加治屋さんはビキニ姿になると鋼のような筋肉美、とても力強く正確でシャープな動きを披露してくれた。

余談ですが、コルネホからRを取ると、Conejoはスペイン語でウサギ(Rabbit)なんですよね。。。
by ponchikrin | 2008-06-09 16:52 | Ballet/Dance Reviews
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